調査結果は、1名を除いて、クラスの全員がいじめられていたのです。その、いじめられなかったと書いた1名が、実は私でした。
登下校で、そのいじめっ子がいつも私に近づいてきたのですが、当時、自閉症ぎみで口数の少なかった私は、彼の話を流して聞いていました。
その子は、野球がよほど好きらしく、中でも巨人がごひいきチームで、テレビ中継をアナウンサーになりきって私に話して聞かせるのでした。私は、まったく野球に興味がなかったので、黙って聞いていただけです。ここで良かったのは、嫌がらずに聞き流していたことです。
もし、マジメに聞いて、自分は阪神ファンだとかいったら、敵視されていじめられたことでしょう。つまり、マジメに聞き過ぎるのも危ないわけです。
また、その子の話を聞くのを嫌がったり拒否したら、間違いなく、いじめられたことでしょう。
「オマエは、おれのたった一人の大切な友人なんだ。」
その子は、そう話して私に宝物やおやつを分けてくれました。
もちろん、私は、その子を友人だと思ったことは一度もありません。ただ、嫌がらずに聞き流していたら、勝手に相手が良い気分になっていたということなのです。
大人になり、私がブログやSNSをやるようになって思ったことは、親身になってコメントを書いたりすると、返って嫌われたり、感情を転移されて(攻撃の標的にされて)苦しめられたりする可能性が高いということです。
親身にならずに、適当に相手に同調した振りをしている分には、何の問題も起りません。
つまり、「NO」という言葉が、トラブルを作るということです。
「YES」で答える分には、何の問題も起りません。相手に問題があったとしても、こちらに火の粉が飛んでくることはないのです。
もちろん、「YES」で答えると言っても、親身に答える「YES」ではなく、嫌がらずに聞き流す程度の「YES」です。曖昧な「YES」を使って、誉め言葉を使って、相手を良い気分にされれば良いのです。
相手は、「NO」を家族から、周りの人から浴びされているわけで、「NO」の言葉にうんざりしています。「YES」や誉め言葉を受けると、幸せな気分になるので、心が落ち着きます。そうなると、幸せな気分を与えてくれる人間に嫌われたくないという思いから、相手に無理なことを求めなくなるわけです。
この技法は、落ち着きの無い子供に教師が接する際に応用できると思います。
落ち着きの無い子に「だめ」の言葉を使ってしまうと、返って逆切れされて大変なことになってしまいます。
そうではなく、何でも良いので誉めることを見つけるか、誉めることに繋がるように仕向けていくようにして、いっぱい誉めてあげるのです。すると、その子は幸せな気分になるので、先生に嫌われたくないと、少しずつ言うことを聞くようになっていくのです。
この誉め言葉こそ、アファメーションすることなのです。アファメーションとは、自信を与えてくれる言葉を繰り返し繰り返し唱え、無意識(潜在意識)にインプットする作業のことなのですが、その子の無意識を支配している否定的な言葉以上に、肯定的な言葉で埋め尽していくわけです。
この際も、理屈でどうのこうのではなく、曖昧なもので十分です。相手にとって受容的な空気を作り出すことができれば大成功といえます。
人は、変えようとするから変わらないのです。受け入れられれば、相手が勝手に変わっていくものだと思います。
私は、子どもの頃のいじめっ子との触れ合いを通して、カウンセリングで最も押さえるべきことを学習していたのでした。